喉ケアの代表的なハーブ“マシュマロウ”。乾燥の季節や風邪・花粉症の季節にはたいへん重宝します。和名はウスベニタチアオイといって、マローブルーなど変種の多いアオイ科のマロウ類の中でも、とりわけ薬効にすぐれるのがこの“マシュマロウ”です。
学名は“Althaea officinalis(アルタエア・オフィキナリス)”。ギリシア語の“altho”(治療する)に由来するといわれ、古代の人々のメディカルハーブとしての信頼が、感じられます。
特に、マシュマロウの持つとろとろとした粘液質が、のどの痛みや咳止めに役立つことが知られていて、根の絞り汁に砂糖を加えてキャンディーがつくられたり、パテ・ド・ギモーヴと呼ばれるペースト状のお菓子となって、役立てられたといわれます。
パテ・ド・ギモーヴの名前でピンと来た人もいるかもしれませんが、ギモーヴといえばそう、お菓子のマシュマロです。そもそも、お菓子のマシュマロはマシュマロウを原料に作られていたともいわれ、何か関係してそうですよね。
ただ、いろいろ調べてみると、現代にみるお菓子のマシュマロとは形が違っていたようです。お菓子としてよりは薬としての意味合いが強かったようなので、昔の人たちがあのふわふわコロコロした形のものを、マシュマロウから作っていたわけではなさそうなのですが・・・どんなものを作っていたのか、とても気になります。
●実験内容
マシュマロを固める粘液を、ゼラチンとマシュマロウの2種類で作って、違いを検証します。
現代のマシュマロは、どうやって作られているかご存じでしょうか。私も作ったことはなかったのですが、作ってみると実はとても簡単なお菓子でした。
基本の材料は、卵白とお砂糖とゼラチンだけ。しっかりとツノのたつメレンゲを作り、そこにゼラチンを混ぜ込んで固めるというだけのシンプルな工程です。
要するに、メレンゲを固めてできたのがマシュマロで、固めるためにゼラチンを使っているのですが、このゼラチンをマシュマロウの粘液で代用(いや、もともとはマシュマロウの粘液をゼラチンで代用したということなのでしょうけど)したら、元祖マシュマロができるのではないか、というのが今回の実験です。
●まずは現代版マシュマロを作ってみる~ゼラチンを使ったマシュマロ作り
そもそも現代版のマシュマロが、どういう感じでできているのかがよくわからなかったので、今回は現代版のマシュマロを作ってみるところから始めてみました。
メレンゲを作りだす前に、ゼラチンを小鍋にいれて火をかけておきます。さらにマシュマロの型となるコーンスターチをバットにひいて、卵などでくぼみを作っておきます。
泡だて器でメレンゲを作り、ゼラチンと砂糖を投入してさらに攪拌します。この時、お好みでココアパウダーを入れたり、フルーツソースを入れて、いろいろな味にすることができます。今回はシンプルに、バニラエッセンスを入れました。
できあがった、とろとろのマシュマロクリーム(?)を、コーンスターチでつくった型に流し込んだら、あとはしばらく冷蔵庫で放置するだけ(冷蔵庫にいれなくても10分少々で固まりました)
おそるおそる手にとると、ふにふにっと頼りないながらに弾力があり、思いのほかきれいでおいしそうなマシュマロができあがりました。
市販のものよりも滑らかで口どけがよいし、ふわふわもちもちしてとってもかわいい!
●次はマシュマロウを使って作ってみる
さて、マシュマロの作り方はわかったので、いよいよゼラチンをマシュマロウ粘液に変えて作ってみます!
メレンゲを作る前にまずは粘液の準備です。今回はこの粘液がキモ。ということで、まずはメディカルハーブの知識にならい、水出しのマシュマロウ粘液を準備(通常ハーブティーは熱湯でいれますが、マシュマロウは水で時間をかけて抽出するのがよいといわれています)
実は気合いを入れて、前日の夜から仕込んでいました。
カップ1杯の水に対して、大さじ2杯分くらいのマシュマロウを入れています。ちなみに、より抽出しやすくなるよう、ミルサーで細かく粉砕したものを入れました。
一晩ですっかり抽出されたのか、揺らしてみると、もやもやとろとろしているのがわかります。色合いがなんだか泥水のようで、真っ白なメレンゲに入れるのが、はばかられます。
食感にも影響しそうなので、せめて濾して使うことを思いつきましたが、目の細かいハーブティーフィルターでは、まったく濾せなかったため、ザルで濾してみることに。
これくらいの粗さなら簡単に濾せると思っていましたが、すごい粘りでなかなか液が落ちてきません。みてください、このビヨーンな感じ。
10分くらいかけてなんとか濾しましたが、結局のところ泥水感はぬぐえませんでした。
ザルに残った方を触ってみると、何かのジェルのような感触でした。ねっちょりとしていて、他のハーブのさらっとした出がらしとは違い指に密着しています。フェイスパックにしたら肌荒れや乾燥にとってもよいだろうな・・・などと考えながらも進めます。
真っ白なメレンゲにこの粘液を投入して、混ぜていきます。
混ぜてしまえば、色はそこまで気になりませんが、うーん・・・ゼラチンのときよりあきらかにゆるい感じがします。
ゼラチンのときは、型に流し込むときにはすでに固まりはじめていましたが、全く固まる気配はなく、さらさらと流しこめてしまいました。
ううう、失敗の予感・・・。
とりあえず入れ切って、しばらく置いてみます。
置くこと10分。
いちまつの希望を持ち、冷蔵庫から取り出して、つまんでみます。
そーっと。
おや?手ごたえが・・・
やっぱりなかった・・・。
よーくみてみると、コーンスターチに染み込んでしまっているようで、すっかりマシュマロクリームが沈んでしまっていました。ゼラチンで作ったときには、型に流し込んだときのぷっくりとした状態のままだったのですが、こちらはすっかりフラットです。一瞬手ごたえがあるように感じたのは、コーンスターチに染み込んだ部分だったようです。
食べてみると、コーンスターチに染み込んだ部分以外は、“実態のない何か”という感じで、メレンゲが少しもったりしたような感触です。味については「海外ののど飴っぽい味がすごい!」という印象でした。
●マシュマロウで再度チャレンジ!
一度目の挑戦は失敗に終わった訳ですが、なんだか悔しい気持ちがぬぐえません。というのも、マシュマロウの粘液を抽出して濾したとき、あきらかに濾した茶葉の方にぬるぬるが多く、液体の方は比較的水っぽかったように感じたからです。
諦めきれずに再度チャレンジすることにしました。
もうこうなったら、なりふりかまっている場合ではありません。
見た目や食感は度外視してでも完成させてみたい!という気分になったので、もともと作ってあった水出しの粘液を漉さずに小鍋に投入。さらに大さじ2杯分くらいのマシュマロウパウダーを足して、水分を飛ばしてみます。
ものすごいどろどろした何かになりました。
前回よりさらに色が濃くなっているので、メレンゲへ投入する際の抵抗感がすごいのですが、実験の趣旨とはなんら関係ないので、思い切って入れて攪拌します。
おおっ!さっきよりもったり感が強い・・・気がする!
型に流し込むときにも、ぷっくりとした形を保っています。
これは期待できそうです。
ついでに、マシュマロクリームが余ったので、フライパンで焼いてみましたが、これは失敗。たぶん、昔の人もこれはやっていない気がする・・・
食べると、焼きマシュマロ的な感じにはなっていました。マシュマロウの異物感が気になって純粋には楽しめませんでしたが。
さて、少しの間冷蔵庫で冷やしていた本編の方の結果をみてみます!!
どきどき・・・
怖いのでまわりから攻めています。お?おー?
つかめた!!!!!
すかさずそのまま口へ運んでみると、マシュマロとキャラメルの中間のような食感です。しかも意外と美味しい!
でもこれは・・・悔しいけれど、公平に考えて固形ではない気がしました。一瞬しかつまんでいられない感じです。残念ですが、これは半固形です。受け止めます。
でも、口に入れて飲みこむ間、意外と美味しい上にねっとりとして、またマシュマロウ独特の根っこの風味も手伝って、喉をケアするという役目は十分に果たしそうだと感じました。マシュマロの形をしていなくても、スプーンで口に運ぶとか、ビスケットみたいなものにつけて食べるとかしたら美味しそうだな、と。
はっ!もしやこれがパテ・ド・ギモーヴ?!実際のところはわかりませんが、こんな感じでペースト状にして使っていたのかもしれませんね。これなら粘液パワーを十分に発揮できそう!ゼラチンと違い、温かくなると溶けて冷たくなると固まるというわけではないので、昔はゼラチンを使っていなかったとなると、このくらいのパテの感じでもおかしくなさそうですよね。
●実験まとめ
マシュマロウを使って現代版のマシュマロを作ることはできなかった。
でも、元祖マシュマロはこんな感じだったのかもと思える、粘液質たっぷりのマシュマロパテができた。
そして、マシュマロウには粘液質がたっぷり含まれていることがわかった。
●おまけ
実は現代のマシュマロも、喉の痛い時や咳が止まらない時に、よいといわれています。のど飴よりもマシュマロを食べるといいよ、といったコラムを見かけるようになりました。
現代のマシュマロも、ゼラチンの粘り気が喉をうるおすため、マシュマロウと同じ理由で喉ケアによいのですね。
マシュマロウで元祖マシュマロを作るのはひと手間なので、喉の調子が悪いと感じたら、マシュマロウのハーブティーと一緒に、マシュマロをお茶受けにしてティータイムなんていかがでしょうか。